1990年,マイケル・カミングは「ヴィジョンズ・オブ・ア・ノーマッド」というバンドを結成した。これは彼にとって、古きものと新しきものとを融合させ、新しいジャンルを作り出すといった革新的なプロジェクトだった。マイケルはディジリドゥーの新しい使用について開拓を続け、ついにクラシック、ジャズ、民族音楽とコラボレートさせた。観客を世界の探検旅行に連れて行く、そんな曲目を作り上げたのだ。そのシンフォニーは、実に50分間ノン・ストップの1曲として、コンサートで演奏されてきた。

クラシック、ジャズ、コンテンポラリー、民族音楽、影響は何にせよ、これらは効果的に融合し合い、豪華な音のタピストリーを織り綴る。

作曲の背景には、オーストラリア砂漠や原住民の聖地、アーナムランドで実際に暮らした経験と、オーストラリア東海岸の原始文化からインスピレーションを受けた部分が大きい。

マイケルはオーストラリア原住民族ワッカワッカ族、ヌヌクイ族・クンジェイル、ジャマ族・ドリーミングなどのダンスグループとの共演でディジリドゥーを演奏してきた。特にヌヌクイ族・ヤッゲラとはこの5年以上に渡り、共演を続けている。
マイケルはシルバーナと共に、トーレス・ストレート島のビ・マリ・ムッリを筆頭とした現地部族ダンサーとの共演をも果たしている。更に、マイケル率いるヴィジョンズ・オブ・ア・ノーマッドに至ってはフラメンコ、アフリカン、キューバン、ブラジリアン、日本舞踊、コンテンポラリー・ダンス等をコラボレートさせたダンスプロダクションを作り、フュージョン・ジャズとクラシック、さらに現代音楽の要素を合わせた演奏で共演を行ってきた。

1994年に、マイケル・カミングとシルバーナ・ヴァン・デュークはARCドリーミングというコンセプトを形成した。

ARCドリーミング


ARCドリーミングは現代音楽と先住民の伝統音楽にダンス団体を複合させた組織である。
同年、彼らはカルチャーバンクという製作プロダクションを創立し、オーストラリアのブリスベン中心地のウェアハウスを一新し、私営の劇場を設立した。そのカルチャーバンク・ウェアハウス・シアターでは原住民とその文化を担ったアーティストたちの発想が渦巻いていた。幾年にも渡る数々の上演と製作は、やがて儀式と祭典のように演者達の心に浸透していき、そこから湧き出たインスピレーションによって、現在の音楽の形を完成させた。エネルギッシュでいながらうっとりしてしまうような彼らの演奏に、観客は虜になるのだ。